捻くれ者のイノベーションマネジメント

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未来シナリオ構築に不可欠な思考法「ペースレイヤリング」

 

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ステュワート・ブランド氏 (Image credit: Ian Kennedy)

 

ビジネス成功の秘訣は、先を読むことです。

 

「今のトレンドはインスタ映えだから、弊社もインスタ映えする製品を作ろう。」

 

こんな平凡な考えでは、レッドオーシャンに自らダイブして大怪我することが目に見えています。

 

では、どうすれば先を読めるのでしょうか?

 

どうすれば未来のシナリオを描けるのでしょうか?

 

正しい未来のシナリオを描くためには、正しい思考法が必要です。

 

 

ペースレイヤリングとは

 

未来のシナリオを描くためのシステム思考法及び未来シナリオメイキング手法の一つが、ペースレイヤリングです。

 

ペースレイヤリングは、将来起こりうる課題を予測することを目的に、ステュワート・ブランド氏によって開発されました。

 

ペースレイヤリングは、あらゆるシステムは、異なるペースで動く階層(レイヤー)によって構成されているという仮説に基づいています。

 

この異なるペースで動く階層の間で起きる摩擦こそが、将来我々が直面しうる課題や機会であり、これらを迅速に察知することで、他者に先駆けて未来を切り開く先手を打てるようになるというわけです。

 

 

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ペースレイヤリング図解(Image credit: Stewart Brand)

 

この未来予測手法の考案者であるステュワート・ブランド氏は、システムを以下の6つの階層に分類しています。
 

 

  1. 流行(最も外側の階層)
  2. 商業
  3. インフラ
  4. 政治
  5. 文化
  6. 自然(最も内側の階層)

 

外側にある階層ほど変化するペースが早く、またその変化は不連続です。

 

さらに、外側の階層の方が目にはつきやすい一方で、システムにおいて強い支配力を持つのは、内側の階層です。

 

前述の通り、異なるペースで動く階層の間には摩擦が発生しますが、小さな摩擦であれば、一部もしくはシステム全体が調整を行い、大きな問題は起こりません。

 

しかし、それを超える大きな摩擦が起きれば、システム全体、もしくは一部の階層が没落してしまいます。

 

例えば、商業の流れに時の政府が追いつけなくなれば、その政府は経済発展を阻害したとして早かれ遅かれ転覆してしまうでしょう。

 

変化の圧力は、外側から内側だけでなく、その逆もありえます。

 

化石燃料の枯渇危機が、エコロジスト文化、そして政府の再生可能エネルギー奨励政策を生み、やがて巨大産業を作り上げてきた背景はその一例です。

 

ペースレイヤリングで未来を描く

 

システムを階層から成るものとして意識出来ると、未来を予測しやすくなります。

 

例えばウェアラブルが流行を迎えた時、システム思考を用いなければ、単純にウェアラブルを製造しようと思い立つでしょう。

 

しかし、いざペースレイヤリングを用いれば、ウェアラブルの発展によって、ビーコン業界が盛り上がるだろう(インフラ)、プライバシー問題が政治化されて解決策が求められるだろう(政治)、個人情報の価値観が変わって新たな自撮り文化のような新しい文化が生まれるだろう、といったシナリオが立てられるのです。

 

未来は決して正確に予測できるものではありませんが、いくつかのシナリオを用意して、準備することは可能です。

 

組織の未来を描く時、ペースレイヤリングをぜひご活用ください。

 

 

*普段は「イノベーションマネジメントを疑う」でイノベーションマネジメント、システム思考、デザイン思考、未来学などについて執筆していますが、今回は実験的にはてなブログを利用してみました。私のTwitterでも、上記トピックに加えて最新のサイエンス事情についてつぶやいているので、ぜひご覧ください。

 

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